日本財団 図書館


 

3.2.2 船体構造部材のき裂伝播挙動の特徴
不静定構造物である船体は疲労き裂が発生、伝播すると、き裂が存在する部材では荷重の分担が変化する。この荷重分担の変化、荷重再配分はその部材に作用している荷重条件一外力が荷重で与えられるか(強制荷重型)、変位で与えられるか(強制変位型)、軸荷重かモーメント荷重か等一に依存する。例えば強制変位型の部材ならき裂が長くなると停留する可能性もあるし、同じ長さのき裂が同種の部材にあっても作用荷重条件が異なると、き裂伝播速度が異なり、き裂長さだけで危険度を判断できないこと、ある部材から他の部材に伝播すると伝播速度が変化することなどである。
(1)強制変位型(変位拘束型)の応力場におけるき裂の停留の可能性
鉱石運搬船のサイドバラストタンク内縦通隔壁付き大骨のブラケットトウ(図3.8参照)から発生し、面材を破断した後、大骨材に進展するき裂を想定して、き裂伝播挙動を調べた。積付け条件は鉱石満載状態とした。波浪変動圧はNKルール、鉱石圧の変動成分はDnVルールを用いた。その結果、
(i)き裂を想定した大骨に大きな応力を生じさせる要因は船側外版と縦通隔壁の相対変位である。
(ii)この相対変位は船側外板と縦通隔壁の剪断剛性によるため、大骨ウエブにき裂が進展しても全体の剪断剛性に影響がなく相対変位はほとんどかわらない(強制変位型)。
(iii)そのため、き裂が入って柔らかくなった分だけ応力が低くなり、き裂が進展するにつれて応力拡大係数範囲は低下しき裂は停留する可能性がある(図3.9参照)。
すなわち、部材に応力を生じさせる原因が強制変位型か強制荷重型かによりき裂伝播挙動は大いに異なる。

 

021-1.gif

図3.8 鉱石運搬船のき裂伝播解析対象部材

 

021-2.gif

図3.9 V.WEB 内のき裂長さと応力拡大係数の関係

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION